発電所が完成と同時に廃棄、「おから工程」ずるずると

　　2日付長江商報によると、湖北省荊門市京山県で8月下旬までに、完成した小型ダムと水力発電施設が使用されないまま「品質に問題あり」として廃棄処分になることが決まった。出資者は発電や建設事業に知識がない他地域の出身者で、事業の推進を地元有力者に頼った結果、悪質な「おから工程（手抜き工事）」が行なわれたとみられる。

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■地元有力者の「言葉」信じて出資

　　出資者は家具製造業などで資産を築いたレイ崇昌（れい?すうしょう）さん。2005年の初めに、同県楊集鎮で小型水力発電事業に投資しようと考えていたが、同じ県内の新市鎮の元共産党委員会書記の黄元峰氏に知り合い、「政策面で優遇する」などと言われ、新市鎮に水力発電所を建設することを決めた。（レイはがんだれに「萬」）

　　楊集鎮はレイさんに、発電所建設には400万元（約6億3200万円）の投資が必要と説明していたが、黄元書記長は、新市鎮ならば160万元、最大でも200万元で十分と説明したという。

　　新市鎮人民政府は05年6月10日付で、「建設工事の終了後、水利局、環境保護局、土管局、林業局、送電会社などが費用徴収を求めた場合、新市鎮人民政府が調停し、投資者への優遇として、費用を最小限に抑える」などと書いた「承諾書」をレイさんに渡した。鎮側の責任者としてサインしたのは黄元書記長だった。

　　ただし、政府各部門の費用徴収には国家の基準があり、鎮政府が発行したこの種の「承諾書」は、法律的に無効という。

■紹介された設計者「資格なし」で罰金

　　ダム設計者の選定で、レイさんの友人は「品質確保を厳格に行なう必要があるので、公開入札にすべきだ」と忠告したが、黄元書記長は「設計者は施工者が選ぶ」と主張して、新市鎮水利站長を名乗る邱継国氏を設計責任者に指定し、費用としてレイさんに1万2000元を請求した。

　　邱氏は、「水利站長」と称して仕事をしていたが、実際には新市鎮水利站の元職員で、同水利站は2002年に行政機構改革で撤廃されていた。京山県によると、邱氏にダム設計の資格はなく、2004年に公務員を早期退職しており、その他の建築物の設計資格もなかった。

　　ダム工事中に、無資格者の設計によることが発覚し、京山県は罰金10万元の支払いを命じた。さらにレイさんは、設計やり直しのため、県水利勘測設計院に5万元を支払った。しかし水利勘測設計院が提出した新しい設計は、「無資格者」である邱氏が提出したものと同一だったという。

■指定された施工会社は脱税

　　施工責任者も黄元書記の指定した人物で、「京山〓隆建築有限公司」の名義でレイさんと契約。レイさんは160万元を支払ったが、同公司は後になり、建築営業税5万元を脱税していたことが分かった。レイさんがダム建設に支払った費用は当初の約束の115万元から172万元に膨らんだ。（〓は「品」の口の位置に金3つ）

　　レイさんはその他、発電設備建設費の45万元や、土地使用料、農民への補償を含め、総額420万元を支払った。施工者が工事完了を宣言したのは2006年6月だった。

■残ったダムには決壊の危険

　　その後、武漢市建築工事品質検測センターが、ダムや発電施設の検査を実施。全長60メートルのダムはコンクリートや鉄骨の使用を基準を満たしておらず、ダム建設などでは常識の温度変化に対応するための継ぎ目も設けられていなかった。水力発電設備も基礎工事や鉄骨?鉄筋の使用がずさんで、「通水すると、施設全体が破壊される」と判定された。

　　検査を担当し、前後4回にわたって現地に足を運んだ検測センターの王啓鑑定士も「建築工事の鑑定を数十年やっているが、これほどひどい水力発電施設を見たのは初めて」と述べた。

　　8月末までに発電施設は撤去されたが、残っているダムには無数のひび割れがある。下流には水田が広がるふたつの村があり、住民数は約100人。増水期にダムが決壊すれば、洪水が発生するのは必至だ。レイさんは「万一の場合、刑事責任を追及される」と心配しており、京山県の防災部門に何回も連絡したが、回答はないという。

　　写真は07年7月に京山県で発生した水害。同県は豊富な水を背景に農業が盛んである反面、しばしば洪水被害に見舞われる。（編集担当：如月隼人）

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